いまこそ「ストレッチ」を日課にすべき3つの理由をスポーツ科学の教授が解説(婦人画報)

いまこそ「ストレッチ」を日課にすべき3つの理由をスポーツ科学の教授が解説(婦人画報)
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いまこそ「ストレッチ」を日課にすべき3つの理由をスポーツ科学の教授が解説

6/8(火) 21:01配信
婦人画報

長期にわたる運動不足と緊張状態で疲れが抜けない、心までも塞ぎがち……。ウォーキングやジョギングを始めようにも、前向きな気持ちになれないという人も少なくありません。こんなときこそ、必要なのはストレッチ。自宅で気軽にでき、しかも気持ちいい! いま続々と報告されているストレッチの心身への効能を、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の宮地元彦先生に伺いました。

お話を伺ったのは…
宮地元彦先生(早稲田大学大学院スポーツ科学学術院教授)●2016年より国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、国立健康・栄養研究所身体活動研究部部長。2021年より現職。 著書に『不調が消える! ふりふりストレッチ』(宝島社)。

取材・文=増田 美加(女性医療ジャーナリスト)
脳内でα波が増加。リラックス効果がさまざまな病気予防に

ストレッチといえば、筋肉や関節を伸ばして体の柔軟性を高めたり、準備運動や整理運動として行うメリットは広く知られています。しかし近年それ以外にも、ストレッチの効果が明らかになってきています。

「特徴的な効果はリラクセーションです。30分程度、全身のストレッチをした前と後で、脳波や自律神経活動を調べてみると、前頭葉でα波を増加させ、心拍数を低下させることがわかりました。ストレッチで副交感神経が優位になり、リラックスできることが明らかになったのです」と宮地元彦先生。つまりストレッチは、自粛生活の不安やイライラ解消にも役立つということ。

「人がイライラして貧乏ゆすりをするのは、じつは体が求めてストレッチをしているのです。無意識に筋肉を伸縮させて血流を促進し、筋肉や関節が固まるのをコントロールしているともいえるのです」と宮地先生。

さらにストレッチのリラクセーション効果は、血圧の低下や動脈硬化予防にも関係しています。「習慣的なヨガが血圧を低下させ、血管を柔らかくすること、また体が柔らかい人は動脈硬化度が低いことなども報告されています。体の柔軟性を上げることは大切で、健康増進効果が高いことは間違いありません」

そんななか、習慣的に運動をしていた人はそうでない人に比べ、新型コロナの重症化、死亡リスクが半分近く低いという研究も2021年4月にアメリカで発表されています。

「これまで習慣的な運動は、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮体がん、心筋梗塞、脳卒中など非感染性疾患の死亡や発症リスクを下げることはわかっていましたが、感染症に関しても同様ということを証明した研究です」。その運動強度はストレッチでも十分なのだそう。体が硬い、と尻込みする必要もありません。「柔軟性は何歳からでも取り戻せます。まずは続けることが重要。毎日5~10分ストレッチをするだけで筋肉は確実に柔らかくなります」

 

【いまなぜ「ストレッチ」が必要?】1.“座り時間”が増えて、筋肉と関節はコチコチだから

「座りっぱなしの生活では、血流が悪くなり血液が停滞します。これが痛みや凝りの要因。血流の停滞は、筋肉の伸縮と大いに関係があります」と宮地先生。私たちの筋肉の中にある血管には弁があり、筋肉が伸縮することで弁が開閉し、血流が維持されています。しかし、関節や筋肉を動かさないでいると、弁が開かず血流が滞ります。すると二酸化炭素や水素イオンなどの代謝産物が流れて行かずに蓄積。これがむくみ、張り、痛み、凝りにつながるのです。

「これらを解消するには、ストレッチが最適。筋肉を伸縮させ、関節を動かすことで血流が回復し、凝りや痛みが改善します。ストレッチするときは、どの筋肉や関節を使っているかを意識しながら行うことも重要です」

2.自粛生活で滅入った気持ちまでほぐれていくから

「ストレッチ後は大脳皮質の前頭葉からα波がたくさん出て、副交感神経が優位になります。ほかの運動にはないストレッチの特長が、このリラクセーション効果なのです」(宮地先生)。筋トレやジョギングでは、β波がたくさん出て交感神経優位になり、一種の興奮状態に。イライラしたり滅入った気持ちをほぐすならストレッチです。

「リラックス効果を高めるには、二人で行うペアストレッチがおすすめ。筋肉を使うときには、多くの場合、拮抗筋(相反する動きをする2つの筋肉)が働きますが、誰かに手伝ってもらうと拮抗筋が働かずリラックス効果が増すのです」。例えば太ももの裏を伸ばすとき、上げた脚の膝を支えてもらうとより伸びが感じられ、α波も多くなり、幸せな気持ちも高まるのだそう。
3.加齢で筋肉は年々硬くなっていくから

加齢によって体が硬くなるのは、筋肉内のコラーゲンとエラスチンの比率が変わり、ゴムのように伸びるエラスチンが減ってしまうからです。筋肉に柔軟性があることはとても大切で、硬くなると肉離れや炎症を起こしやすく、関節の可動域も落ち、怪我やトラブルの原因にも。

「しかし、ストレッチを習慣にすれば、柔軟性は取り戻すことが可能です。効果的なストレッチを行うポイントは、
1.目的に応じて、伸ばす筋肉を意識して行う
2.1カ所約30秒かけてじっくりゆっくり伸ばす
3.限界まで伸ばすと伸張反射によって筋が過剰に収縮して逆効果なので、痛くなく気持ちよいところで止める
4.呼吸を止めず、深めの呼吸で行う
ことが大切です」(宮地先生)

2021年06月09日