食べ物依存、性依存、買い物依存…「依存は誰にでもおこり得る」と医師が指摘
AERA dot.
近藤昭彦2019.4.25 08:00dot.#病気
https://dot.asahi.com/dot/2019042300011.html?page=1
アルコールやギャンブルだけでなく、食べ物や買い物など、「依存」の対象はさまざま。「依存」は何が原因になりやすいのか、本人や家族はどう対処したらよいのか。依存症対策全国共同センター長を兼ねる国立病院機構久里浜医療センター院長の樋口進医師に聞いた。
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「依存」の原因は千差万別です。ストレス状態から逃れるためとか、大切な人が亡くなるような喪失感を埋めるためとか言われますが、そうした体験は誰にでもあることで、多くの人はとくに依存になるようなことはなく、科学的根拠は乏しいといえるでしょう。
何が依存の原因になりやすいか、どのような人が依存になりやすいかではなく、「依存はいつでも誰にでもおこり得る」と考え、理解を深めておくことが大切です。
ただ、お酒に強い人がアルコール依存になりやすいのは確かです。お酒に強く、なかなか酔わないために飲む量が増え、その結果さらにお酒に強くなってしまうという悪循環に陥りがちです。
また、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の患者さんは、一般的に依存になりやすいとされています。この傾向があると、自己コントロールが難しく、結果を顧みないような慎重さに欠ける行動をとりやすいからです。
このような依存には、さまざまな種類があることが明らかにされています。依存のモデルは、アルコール依存や薬物依存です。「これらの、依存にみられる特有な依存行動や脳内の変化がみられるか」などの医学的なエビデンス(科学的な根拠)が蓄積されると、正式に依存と認められることになり、国際疾病分類(ICD)の依存セクションに収載されます。
アルコール依存と薬物依存は古くから同分類に収載されており、最新の第11版(ICD-11)にはギャンブル依存、ゲーム依存が、それぞれ「ギャンブル障害」「ゲーム障害」として新たに収載される予定です。
依存にはほかにも、食べ物依存や性依存、買い物依存などがありますが、これらはまだ上記の医学的なエビデンスが足りないという段階です。ただし、ICDには、「その他の習慣および衝動の障害」という項目があり、これにあてはめて国内でも治療が実施されています。
依存症の治療はカウンセリングや認知行動療法などの心理社会的治療と呼ばれる方法が中心です。依存そのものに対する薬物療法は、アルコール依存とニコチン依存に対してのみおこなわれているのが現状です。
このアルコール依存に対しては、近年、依存が軽度なら断酒までしなくても減酒でもよいとの考えに基づく治療が広がってきました。しかし、これは例外であり、依存に対しては「やめ続ける」のが大原則です。まずこれを自覚することです。「依存は再発する」のが特徴であり、何年経ってもすぐ元に戻ってしまうリスクを抱えているのです。
やめ続けるために、本人は周囲の人に「お酒を飲まない」「ギャンブルに行かない」と宣言し、協力を求めるとよいでしょう。周囲の人も「再発リスク」を理解して注意深く見守り、「もうそろそろ一杯くらいいいだろう」などと誘うことは絶対にしないでください。
また、ギャンブル依存などによる借金を家族が肩代わりするケースは珍しくありませんが、本人にとっては「これでまたギャンブルができる!」となって、依存を助長させることになります。家族としてはなかなか難しいのですが、「本人の問題は本人に返す」のが原則です。ただ、いつもこのような突き返すような対応では関係がギクシャクするだけです。依存から立ち直るためにできたことをみつけ、「ほめる」ことも忘れないでください。
さまざまな依存に対して、患者同士の自助グループのほか、家族同士の自助グループができています。孤立してしまわないよう、自助グループに参加するのもよいでしょう。自助グループへの参加者は治療が進みやすいことが明らかです。相談先がわかない場合は、各都道府県の精神保健福祉センター(自治体により名称が異なる場合があります)に尋ねるとよいでしょう。
(文・近藤昭彦)