<ストーカー>「加害者の考え方変える」医師による治療

<ストーカー>「加害者の考え方変える」医師による治療
9/23(日) 9:25配信 毎日新聞

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180923-00000010-mai-soci

 神奈川県内で唯一、県警から委嘱を受けストーカー加害者を治療している「大石クリニック」(横浜市中区弥生町)の大石雅之院長(64)が毎日新聞のインタビューに応えた。これまで、県警が仲介したケースを含む46人の治療に関わってきた。大石院長は「被害者の防御だけでは限界がある。加害者の考え方を変える治療もあることを知ってほしい」と呼びかけている。【杉山雄飛】

 --クリニックに来るストーカー加害者の共通点は

 大きく分けて、DV(ドメスティックバイオレンス)につながるケースと、それ以外がある。DVのケースでは暴力や性格の不一致などの原因で別れた配偶者や恋人につきまとう。加害者は支配欲が強く、自分が悪いとは思っていないことが多い。「止めに入った警察のせいで2人の関係が壊れた」など、独特の理屈で説明してくることもある。

 それ以外のケースでは、加害者とほとんど面識がない他人や著名人が狙われる。被害者が前兆に気付かず、ある日突然、家にやってくることがある。性依存症などが背景にあることもある。

 --治療法は

 (考え方のゆがみに気付かせ改善させる)「認知行動療法」を応用したプログラムを使っている。患者によって集団と個別での治療を使い分けている。

 --具体的には

 DVのケースでは、「男は女よりも偉い」というような間違った考えがベースにある場合が多く、スタッフと一緒に整理していく中で、修正してもらう。また相手への憎しみなど、どういう時に自分の感情が抑えきれなくなって、ストーカー行為につながるかを認識し、その状況を避ける方法もある。中には自分の障害を知らない加害者もいるため、診断名を付けて自分の特性を理解することで、社会に適応できるケースも多い。

 --治療期間と費用は

 ケースにもよるが、週1回を10~20回程度重ねる。治療費は保険が適用されるので1回あたり500~1000円ほどになる。

 --課題は

 防犯カメラや戸締まりなどの対処法は知られているが、治療によって加害者に変わってもらうという考えが広まっていない。警察が注意することで9割近くの加害者は行為をやめるが、残り1割は執着し続けるとされている。この場合は治療をしないと問題の根本的な解決にはならないと考えている。

 --治療が続かない人もいるのでは

 当院では、DV・ストーカーの加害者で半年の治療が継続する率は25%ほど。日本での治療は始まったばかりで、手法が確立されて社会でも知られるようになれば改善されるだろう。最近はネットで情報を得た加害者が自ら治療に訪れることも増えた。可能であれば、被害者や周囲の人が治療に行くよう促すことが重要だ。

 ◇昨年相談件数 過去最多1202件

 県警に寄せられたストーカーの相談件数は2017年で1202件に上り、過去最多となった。今年も6月時点で514件と高水準で推移している。

 17年の対応別では、警告92件(前年比20件減)▽禁止命令等33件(同27件増)▽逮捕などの検挙62件(同29件減)--となった。17年施行の改正ストーカー規制法により、緊急時には事前の警告なしで警察が禁止命令を出せるようになったことなどが、対応件数に影響した。

 一方、「ストーカー加害者への医療制度」は16年12月に始まった。対象となる加害者は、県警が関わった事案の中から捜査員らが治療の必要性を個別に判断している。治療は任意のため17年度は受診を勧めた加害者のうち8割が治療を受けたが、なかには受診をやめる人もいる。県警人身安全対策課は「加害者を医療につなぎ、いかに継続していくかが課題」としている。

最終更新:9/23(日) 17:19
毎日新聞

2018年09月23日