<毎日新聞調査>救急拠点、終末期の患者への延命中止7割

<毎日新聞調査>救急拠点、終末期の患者への延命中止7割
5/31(木) 6:30配信 毎日新聞

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180531-00000002-mai-soci

◇継続派は「刑事責任追及の恐れから」

 重篤な患者に高度な治療を行う全国の救命救急センターのうち、少なくとも49病院で昨年、回復の見込みがない終末期の患者への延命治療を取りやめていたことが、毎日新聞の調査で明らかになった。取りやめの有無を答えた病院の約7割を占めた。亡くなった患者は1120人に上り、うち9割超が高齢者だった。刑事責任追及の恐れから「取りやめない」と回答した病院もあった。急速な高齢化による「多死社会」を迎える今、厳しい判断を迫られる医療現場の実態が浮かんだ。

 調査では、救命救急センターを備える全国288(1月末現在)の病院に対し、昨年、延命治療を途中で中止したり最初から差し控えたりした取りやめのケースについてアンケートし、113病院から回答を得た。取りやめの有無を答えた73病院のうち、「ある」と返答したのは67%に当たる49病院。「ない」は24病院だが、うち10病院が取りやめを検討していた。残る40病院は「微妙な問題」などと回答を控えた。

 取りやめで亡くなった患者は計1120人(中止308人、差し控え812人)で、65歳以上の高齢者が92%を占めた。ただ、集計できずに「多数」などと答えた病院も複数あり、実際はさらに多いとみられる。取りやめた治療内容を、49病院に複数回答で聞くと、血圧を上昇させる昇圧剤の投与が8割を超え、人工呼吸や人工透析がいずれも約7割だった。疾患は末期がんや脳内出血、老衰など多岐にわたった。

 判断理由(複数回答)は、「患者や家族の希望」が89%で最も多かった。「家族への負担考慮」は34%。意思確認の方法(同)は「患者の家族が決定」と「家族が推定した患者の意思」が8割に上ったが、「本人から確認」は2割にとどまった。

 一方、「取りやめていない」と明示した病院も複数あった。「(取りやめが)家族の総意かどうか確認できない」「院内で意見がまとまらない」などの意見が寄せられ、延命を巡って病院ごとに判断が分かれている状況も分かった。

 終末期医療を巡っては2004~06年、北海道と富山県の病院で高齢患者らの人工呼吸器が医師に取り外されて死亡した問題が発覚。医師らは殺人容疑で書類送検されたが、いずれも不起訴処分になった。

 07年、厚生労働省が延命治療の取りやめを認める要件や手順を示す終末期医療の指針を策定。今年3月に初めて指針を改定し、患者と家族、医師らが繰り返し医療・ケアの方針を話し合うことなどを盛り込んだ。

 指針では患者本人の意思確認が基本となる。だが、今回の調査では本人に確認できないケースが大半を占め、現場の医師が迷いながら判断を迫られている実態が浮かび上がった。【近藤大介、三上健太郎】



 ◇事前の意思重要

 東京大大学院の会田薫子特任教授(臨床死生学)の話 国や各医学会の指針が医療現場に浸透し始め、患者の回復が見込めない場合は延命治療を終える救急医が増えているのだろう。高齢化が急激に進む中、救急医は患者の救命だけでなく、治療を終える困難な判断まで迫られる時代に入ったと言える。延命治療を行うか否かの判断は、患者の意思が重要になる。だからこそ、誰もが自身の死が差し迫った際に望む医療を考え、普段から家族と話し合うことが大切ではないか。

最終更新:5/31(木) 9:37 毎日新聞

2018年06月01日