《ニュース》川崎医科大学消化管内科の塩谷昭子教授に聞く

川崎医科大学消化管内科の塩谷昭子教授に聞く
4/3(火) 10:24配信 山陽新聞デジタル

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180403-00010005-sanyo-hlth

 

伝統が息づく研究室で、先端治療に挑む臨床の最前線で、スタッフを束ねて指揮する新進の医学教授に決意を伺う。8回目は川崎医科大学消化管内科の塩谷昭子教授に聞く。

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 ―国内では、消化管を専門とする女性大学教授は、塩谷教授一人しかいないそうですね。

 医学界の女性管理職は非常に少ないのが現状です。新卒医師に占める女性の割合が高まっていますが、若くして出産や子育てで第一線を退き、そのままキャリアを終えてしまう。女性が働きやすい環境の実現に向け、家庭、地域、大学当局、周囲全体でサポート体制を充実させていかなければなりません。医師不足が懸念され、このままでは日本の医療そのものが立ちゆかなくなります。

 女性医師の支援については、各分野の学会でも検討されています。消化器系の学会では、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝臓学会、日本消化器外科学会などが協力して毎年、世界最大規模の合同学術集会「日本消化器関連学会週間(JDDW)」を開催しています。女性医師のキャリア継続やキャリアアップについて考えるプログラムが設けられており、今年のJDDW(11月、神戸市)では、私が司会を務め、「輝く女性のためのキャリア支援」と題したセッションを行う予定です。

 ―消化器疾患の女性患者が増え、女性の消化器医の診察を望むニーズが高まっています。

 部位別のがん死亡数をみると、女性のトップは大腸がんです。増加の背景には食生活の欧米化や高齢化があり、死亡者は年間2万人を超えています。部位別罹患(りかん)数も乳がんに次いで多くなっています。

 健康診断やがん検診で貧血や便潜血を指摘されても、月経や痔(じ)のせいと思い込んで医療機関を受診しない。その結果、がんが進行した状態で見つかるケースが少なくありません。「男性医師に診てもらうのが恥ずかしいから受診しない」という女性も目立ちます。

 潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)、肛門の疾患を抱えている若い世代も増えています。早期発見、早期治療につなげるためにも、女性の医師や医療スタッフを増やすことが欠かせません。

 ―川崎医科大学付属病院では、教授が中心となり、保険適用前の2007年1月から、小腸カプセル内視鏡検査を導入しています。これまでに約1000例の検査を行い、全国有数の実績ですね。

 高齢の患者さんになるほど、心疾患や動脈硬化といった複数の基礎疾患を抱え、血管が詰まるのを予防する薬や痛み止めなどさまざまな薬を飲んでいます。その結果、多くの患者さんに薬剤の副作用として消化管出血が生じています。

 消化管のうち小腸は長さが6メートル余りもあり、胃や大腸に用いる内視鏡では届きません。カプセル内視鏡は人さし指の第1関節から先ほどのサイズで、小型カメラを内蔵しています。水と一緒に飲み込めば自然に消化管内を進み、最終的に便と一緒に排出されます。内視鏡検査では必須の下剤服用が原則必要なく、検査中もほぼ普通に過ごせます。患者さんに優しい、侵襲性の低い検査です。

 7~8時間かけて数万枚もの小腸内の画像を撮影し、体外のデータレコーダーに転送します。その画像データを私たちが読影し、どこに病変があるのか、どう治療するかを探ります。

 ―膨大な画像データから病変を確認するには、高い読影技術が求められるのではないでしょうか。

 日々の診療に追われる医師だけで、すべてのケースで満足いく読影をこなすのは非常に困難です。最悪の場合、病変を見落とす可能性もないとはいえません。カプセル内視鏡読影支援技師は、医師の監督指導の下で画像診断を支援するエキスパートです。技師に加わってもらうことで、より精度の高い読影が実現できます。

 私は日本カプセル内視鏡学会の理事で、認定技師制度委員長を務めています。認定制度を設け、専門知識と読影技術を備える読影支援技師の養成を進めています。

 最近はコンピューターの読影ソフトも高性能になってきました。近い将来、AI(人工知能)が導入されれば、さらに精度の高い読影が短時間でできるようになると思います。

 ―教授は広く市民に健診・検診の重要性を訴えておられますね。

 病気の予防や早期発見には、定期的に健診・検診を受けることが求められます。しかし、受診しただけで満足し、肥満、高脂血症、高血圧、高血糖などの異常を指摘されてもそのまま放置したり、あるいは安易に薬を飲めばよいと思ったりするのはよくありません。

 健診・検診の結果を踏まえ、食事療法や運動療法による生活習慣の改善に取り組み、薬について正しい知識を持つことが大切です。今後も市民向けの公開講座などで、機会を捉えて健康づくりの実践を呼び掛けていくつもりです。

 私の務めは、患者さんが最適な医療を受けられるようにすること、若い医師を育てること、将来役に立つであろう新たな医療を研究することです。より多くの人々が健康で幸せに暮らせる社会を目指し、少しでも貢献できれば幸いです。

 しおたに・あきこ 和歌山県立桐蔭高校、同県立医科大学卒。同大学内科学第2講座講師、和歌山大学保健管理センター助教授、米国デューク大学客員教授などを経て、2006年7月に川崎医科大学へ。翌年4月に同大学内科学食道・胃腸科准教授となり、15年4月から現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会認定指導医、日本消化器病学会指導医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医など。

2018年04月05日